注文住宅の施工会社選びの決め手となる、相見積もり。工事内容と価格を客観的に比較して、自分たちの希望に合うベストな会社選びを成功させましょう。
今回の記事では見積書の見方や比較のポイント、注意点についてご紹介します。
見積書の種類と、相見積もりを依頼するまでの流れ
注文住宅を依頼する場合の見積書は、施工会社を検討するときや契約を結ぶ前に施工会社が工事の内容と金額を提示する書面のことです。見慣れない書類なので最初はどこをどう見ればいいかわからないかもしれませんが、重要書類なのでしっかり内容を理解しましょう。
相見積もりとは複数の会社から見積書を受け取り、比較検討して一社を選ぶことです。信頼できる施工会社が決まっている場合は不要ですが、ゼロから始める場合には相見積もりが有効です。
無料で依頼できるのはどこまで?見積書の種類
見積書には以下の2種類があります。
●概算見積
依頼する会社を検討している段階で、工務店やハウスメーカーから提出される見積もりです。通常、簡単な家の間取り図であるラフプランと一緒に提示され、どんな家がどの程度の費用でできるのかがわかります。ここまではほとんどの施工会社が無料で行ってくれます。施工会社選びで複数の会社に相見積もりを依頼する場合、「概算見積」を比較検討することになります。
●本見積
依頼する施工会社とプランがほぼ決まった段階で、会社はより詳細で角度の高い見積書を提出します。これが本見積で、詳細見積と呼ぶこともあります。契約の根拠となる見積書なので、契約をする前に入念に確認をする必要があります。
候補を2~3社に絞り込んで相見積もりを依頼
多くの会社がラフプランと概算見積までは無料で作成・提出してくれますが、だからといって見積もりを多くの会社からとっても検討に時間がかかりすぎてしまいます。相見積もりは施工会社選びの最終段階と考えてください。
相見積もりを依頼するまでは以下のような流れとなります。
(1)施工会社について情報を集める
まず施工会社の情報を集めます。そのためには各社への資料請求、イベントへの参加、住宅展示場の訪問などの方法があります。大手住宅情報サイトが提供するセミナーなども参考になるかもしれません。ハウスメーカーの場合はモデルハウスを見学できますが、工務店の場合は実績を写真・映像や現場見学会などで見せてもらいましょう。また、気になる工務店があったらそこが手がける現場を調べて見に行ってみるのも参考になります。
(2)自分が建てたい家のイメージを明確にする
情報収集の一方で自分や家族が建てたい家のイメージを話し合いながら固めていきます。工務店やハウスメーカーを訪問すると、希望する住まいについての「ヒアリングシート」の記入を求められることがありますが、このような作業によっても家族の理想とする家が具体的になっていきます。さらに各会社の営業担当者にも積極的に相談していくといいでしょう。家づくりについていい提案をしてくれる担当者がいる会社は有力な候補のひとつ。自分や家族の希望を実現してくれそうな会社もだんだん絞り込めていくはずです。
(2)相見積もりを依頼する会社を2~3社に絞り込む
建てたい家についてのイメージを固めながら施工会社の情報を集めたり会社担当者と打ち合わせを重ねることで、自然に依頼してみたい会社の候補は絞られてくるでしょう。相見積もりを依頼する会社は2~3社が適切です。会社を絞り込むポイントは以下の通りです。
・会社の創業年数や実績は十分か
・担当者の話はわかりやすく納得感があるか
・値引きと引き替えに契約を急がせたりしていないか
・社長ブログ、スタッフブログなどで情報発信しているか
・職人を自社で雇用しているか(※工務店の場合)
※工務店には様々なタイプがありますが、自社で社員として職人を雇用して長く実績を上げている会社なら安心感があります。
相見積もりにはルールがある!依頼時の注意点とは
候補の会社が決まったら、相見積もりを依頼します。ここでは依頼の仕方がポイントです。適切な方法で依頼することできちんと比較検討でき、納得できる結果にたどり着けますが、ルールを無視したやり方をしてしまうと会社選びがうまくいかないばかりか、依頼したい会社との信頼関係を損なってしまうことにもなりかねません。
(1)依頼する会社に「相見積もり」であることを伝える
施工会社にとって「相見積もり」というのは、自社が時間をかけて作成したプランがムダになるかもしれないのですから決して歓迎というわけではありません。しかし依頼主の当然の権利でもあるので、お互いに納得して進めていくことが大切です。
そこで、依頼する会社を絞り込んで決定したら、すべての会社に対して相見積もりをすることを伝えたうえで概算見積もりなどの提案を依頼します。このとき、相見積もりの対象となる他の会社名は知らせませんが、対象の会社が2社なのか3社なのか、候補となっている会社の数を伝えると、「自社は有力候補」との認識のもとで意欲を持ってプランや見積もりを作成してくれると期待できます。
(2)依頼する内容や条件を統一する
相見積もりを依頼するとき、すべての会社に同一希望内容・条件を提示することが大切です。具体的な項目としては予算・間取り・建築面積、そのほかに「デザイナーズ風」「ナチュラルモダン」「和の雰囲気」などのデザインコンセプトや「バリアフリー」「書斎が欲しい」「リビングは広く」などの必ず実現したい条件もあるでしょう。
(3)無理のない金額を予算の上限として設定
相見積もりは概算見積もりであり、本見積の前段階とはいえ、そこでの予算が後々の基準となります。相見積もりで比較するのは「本体工事価格」なので、自己資金やローンの借り入れ見込みで支払うことができる総額を試算し、本体工事の価格はその約70%までの範囲で設定しましょう。予期せぬ追加費用が発生する可能性を考慮すればさらに余裕をみたほうがいいかもしれません。
(4)相見積もりやラフプランの内容を他社に見せない
相見積もりを受け取ったが「それぞれ一長一短で、比較が難しい」というのはよくあることです。そんなときに意中の会社に他社の見積もりやプランを見せて相談したくなりますが、これはルール違反です。口頭で「もう少しリビングを広くしてほしい」「外観のデザインをモダンな雰囲気に」などと伝えることはOKです。
その他、お見積り前に確認したいことなどもあると思います。
川下建設では、様々な条件や制約、進め方についてなどのご相談から承っておりますので、是非一度お問い合わせください。
各社バラバラな見積書の項目を理解しよう
相見積もりを依頼して各社の概算見積もりが上がってきたときに、表紙に書かれた工事費の総額だけを見て、一番安いところに決めればいいというわけではありません。項目を比較して検討することはかなり難しいと感じる人は多いのではないでしょうか。なぜなら各社の見積書は書式も項目もバラバラで、単純比較ができないからです。
まず各項目を理解することから始めましょう。
大まかな見積書の形式を確認
注文住宅の概算見積書はトータルの金額と工事項目別の金額が記された「工種別見積」から成ります。
ハウスメーカーの場合は少し書式が違い、工種別よりも大まかな「部位別見積」であることが一般的です。
(1)見積金額には何が含まれているかを確認
見積書には冒頭にトータルの金額が表示されています。まずその金額に何が含まれているかをチェックしましょう。「消費税別途」とあればそこに消費税を加算したものが支払うべき金額です。
また、総額は「建設本体工事費」と「付帯工事費」、さらに「諸経費」の合計となっていることが多いですが、念のためトータルの見積金額に含まれている費用を確認しましょう。
(2)「本体工事費」「付帯工事費」「諸費用」の分類を確認
見積もりの総額は、「本体工事費」「付帯工事費」「諸費用」に分類されていることが多いです。
本体工事費が「建物本体工事」と「設備工事」に分かれていることもあります。付帯工事費が見積金額の総額に含まれているかどうかも確認してください。諸費用には税金、ローン手数料などが含まれます。
本体工事費の各項目
本体工事費とは建物部分の工事費
本体工事費とは建物本体を造る費用のことです。電気・水道などが使えるようにする引き込み工事、空調設備工事などは本体工事費に含まれていたりいなかったり会社によって違いがあるので、「どこからどこまでが本体工事か」を確認することが大切です。
本体工事費の項目は会社によって少しずつ違いますが、大体以下のような項目に分かれています。
・仮設工事
仮設工事には足場組み、仮のトイレ・電気設備、養生や清掃などが含まれます。建物の形には残りませんが欠かせない大切な工事です。
・基礎工事
家の基礎部分を造る工事です。地味ですが熟練の技術が必要な工事です。
・木工事
構造材、下地材、仕上げなど、木材を使う工事全般の材料費と工賃が含まれます。木造住宅では工事費全体の3~5割を木工事費が占め、相見積もりでは差が出やすい項目です。
・屋根工事
屋根の工事には庇(ひさし)や樋(とい)の工事も含みます。
・外壁工事
外壁を塗装、漆喰、金属板などで仕上げる工事です。
・建具工事
金属・木・ガラスなどの建具があります。
・石・タイル工事
石やタイルを使う仕上げ工事です。
・左官工事
外壁や内壁を土やモルタルなどで仕上げる職人仕事です。
・内装工事
床・壁・天井などの仕上げ工事です。
・設備機器工事
システムキッチン、洗面化粧台、ユニットバスなどの設備関連工事です。多くの費用を占める部分となります。
・電気工事
住宅のコンセント、配電など電気設備一式の工事となります。
・給排水設備工事
給排水関連の工事費用です。
・雑工事
その他の工事費用となります。
・諸経費
工事費の10%程度の経費が加算されます。会社によってはこの項目が高額となっていることもあります。
付帯工事費の各項目
付帯工事費は建物本体以外だが、必要不可欠なものが多い
付帯工事費には地盤改良工事、造園工事、空調設備工事などが含まれます。そのほとんどが住まいに欠かせない工事であるにもかかわらず付帯工事として別勘定になっている理由は、施工会社以外の専門会社に依頼することも多いためです。
付帯工事には以下のような項目があります。
・地盤改良(宅地造成工事)
建物を建てる敷地の地盤が弱い場合などに工事が必要となります。
・外構工事
敷地内の建物の外回りを整備する工事です。
・造園工事
庭の植栽を整備する工事です。
・空調工事
エアコンその他冷暖房・換気設備の工事です。全部または一部が本体工事費に含まれることもあります。
・カーテン工事
カーテン、ブラインド、その関連部品などの工事です。
・引込工事
水道・電気・ケーブルテレビなどを住宅で使用可能にするための工事です。
意外と難しい、相見積もりの比較。会社選びのポイントは?
相見積もりの比較は手間暇がかかる作業となりますが、納得がいくまで各社に質問した上で、じっくり検討していくことをおすすめします。
見積書の内容がしっかり理解できるまで質問する
相見積もりでは対象となる会社の見積もりが出揃ったところで内容を比較し、不明点をリストアップします。それを各社に質問し、不明点をクリアにすることが大切です。特に、各社ごとに異なる項目にはそれぞれどんな費用が含まれるのか、各社で見積もり金額に大きな差がある項目があればなぜその金額になっているのかなどをしっかり質問しましょう。
項目を揃えた比較表を作成してみる
各社が提示している見積書の項目についても一通り理解ができたら、全体を比較しやすいよう、項目を揃えた比較表を作っ
てみましょう。比較したときに価格差があまりない項目はおおむね適正価格と推測できます。一方会社ごとに価格差がある項目は、改めて各社になぜ高額あるいは低額となっているのか質問し、その価格差の根拠を理解しましょう。
値引き交渉はどこまでできる? タイミングは?
注文住宅の依頼で値引き交渉はどこまでできるでしょうか。実は、注文住宅のようなこれから費用が発生する商品の場合値引き交渉がマイナスに働きやすいといえます。
土地や建売住宅であればすでに原価が確定しているので、売主はそれを踏まえて買主に対して「ここまでなら値引きできる」という許容範囲で交渉に応じます。
一方注文住宅の場合はどうでしょうか。家を建てるための費用は今後発生するのですから、施工会社が値引きに応じたらその分だけ材料費や人件費を下げるというのは当然考えられる手段です。
したがって、「値引きに応じてもらった」と安易に喜び会社を選ぶというのは賢い選択とはいえません。
具体的には「見積総額××円」などの合計金額から何%かを値引きして欲しい、というような根拠のない値引き交渉はあまりおすすめできません。当初から値引き交渉対策として数%程度の値引きを見込んで価格に上乗せしている工務店相手なら交渉の余地がありますが、もとから値引きの余地がない良心的な価格を提示している工務店を遠ざけてしまうリスクもあります。
一方で、相見積もりをじっくり比較したうえで、「この項目が高すぎるようだが値引きの余地はないか」といった切り口で交渉することは意味があります。工事の内容についてよく説明を受けることでお互いに納得し合い、価格を下げられる可能性があります。
値引き交渉のタイミングとしては相見積もりで会社を決定するときよりも、すでに依頼する会社が決定した後の本契約の直前がベストとされています。そして値引き交渉は「一回限り」。一度値引きをした後にまた値引きを持ち出すのはマナー違反です。
いずれにせよ、専門知識を持っていない施主が値引き交渉をするというのはかなり難しいといえるでしょう。それよりはむしろ、相見積もりをとる段階で「値引き交渉はしないので、できるだけ低い見積金額を出してください」というように言い添える方が、お互いに効率よく、そして気持ちよく仕事を進めていけるのではないでしょうか。
相見積もりの最大のメリットは、建てたい家のイメージが明確になること
相見積もりの目的は「できるだけ低価格で家を建てること」と思っている人が多いかもしれません。しかしご紹介してきたように、施工会社の工事内容はそれぞれに違うので、同じ条件で相見積もりを依頼したときに最も低い見積金額を提示してきた会社が必ずしもベストな会社とは限りません。「この内容でこの価格なら納得できる」というように、常に工事内容と価格とのバランスで判断する必要があります。
むしろそれより重要な、施主にとって相見積もりをとることのメリットは、建てたい家のイメージをより明確にできることであるといえます。相見積もりを比較検討するにはまず、専門知識を含めてしっかりと工事内容を理解する必要があるし、次にはそれを自分の建てたい家の希望条件と照らし合わせて、どの項目を優先すべきか検討していくというかなりパワーのかかる作業となります。
この過程を通して、自分が建てたい家のなかで本当に譲れない条件は何か、価格が高くても実現したい希望は何か、などが明確になっていきます。「家づくりに対する、自分自身の納得感」こそが相見積もりで得られる大きな成果といえます。
このようにして、詳細な内容まで納得した上で選んだ会社とは、その後スムーズに工事を進めていくことができるでしょう。