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地震・災害に強い注文住宅とは? 木造でも実現できる、最新の耐震性能


地震大国である日本。加えて近年では毎年のように日本各地で台風やゲリラ豪雨などにの災害が起きています。注文住宅を建てる際に「地震や災害に強い家を」という点を重視する人が多いのは当然といえるでしょう。
今回は、注文住宅における耐震性能について解説していきます。

注文住宅はどのように地震・災害に備えるべきか

近年の地震や災害に備えるため、注文住宅を建てる際にはどんなことを意識すればいいのでしょうか。まず、備え方のポイントとなる情報を整理してみていきましょう。

こんなに増えている、近年の主な災害

一般の住宅が深刻な被害を受けた近年の災害について、以下にまとめました。

近年の災害と建物被害状況(主に東日本大震災以降)
1995年 阪神淡路大震災 神戸市などで多くの犠牲者。約65万戸の全半壊・損壊・全半焼
2004年 新潟県中越地震 新潟で多くの犠牲者。1.7万戸の全半壊
2011年 東日本大震災 津波により多くの犠牲者と40万戸の家屋全半壊の被害
長野県北部地震 栄村を中心に694戸の建物が全半壊および一部損壊
台風12号 奈良和歌山で多くの犠牲者。約26000戸で建物全半壊と浸水被害
2012年 茨城県などで竜巻 落雷で犠牲者。1904戸が全半壊・一部損壊
2013年 台風26号 伊豆大島で犠牲者。400戸で全半壊・損壊・浸水
2014年 広島市土砂災害 豪雨により広島市で多くの犠牲者。約1.4万戸の全半壊・損壊・浸水
2016年 熊本地震 熊本・大分で多くの犠牲者。約19万戸の全半壊・一部損壊
台風7号など 北海道で犠牲者。約3100戸の全半壊・損壊・浸水
2017年 九州北部集中豪雨 福岡・大分で多くの犠牲者。約3700戸の全半壊・損壊・浸水
2018年 大阪北部地震 大阪で犠牲者。2.7万戸の全半壊・一部損壊
西日本豪雨 広島、岡山、愛媛などで多くの犠牲者。5万戸以上の全半壊・損壊・浸水
台風21号 関西などで犠牲者。5万戸以上で全半壊・損壊・浸水
北海道胆振東部地震 北海道東部で多くの犠牲者。約1.5万戸で全半壊・一部損壊
2019年 台風15号 千葉県に被害。4.2万戸以上で全半壊・損壊・浸水
台風19号 東北・長野などで多くの犠牲者。3.5万戸以上で全半壊・損壊・浸水
出典:内閣府ホームページ

 

これを見ると、毎年のように大きな地震や災害に見舞われており、日本全国どこに住んでいても被害に遭う可能性があるということがわかります。
大切な家と家族を守る、耐震・防災を意識した家づくりが重要であること、が改めて実感できます。

熊本地震で判明した「耐震等級3」の重要性

震度7が2回観測されるなどの大きな揺れで熊本一帯に深刻な被害をもたらした熊本地震。その後政府は現地の建物被害状況を調査しました。国土交通省の熊本地震の原因分析に関する資料には以下の記述があります。

旧耐震基準(昭和56年5月以前)の木造建築物の倒壊率は28.2%(214棟)に上っており、新耐震基準の木造建築物の倒壊率(昭和56年6月~平成12年5月:8.7%(76棟)、平成12年以降:2.2%(7棟))と比較して顕著に高かった。

なお、住宅性能表示制度による耐震等級3(倒壊等防止)の住宅は新耐震基準の約1.5倍の壁量が確保されており、これに該当するものは、大きな損傷が見られず、大部分が無被害であった。

引用元:「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

以上のように、耐震基準についての非常に重要な調査結果が報告されました。
熊本地震のような大きな地震でも倒壊せずダメージも少ない安心できる建物は「耐震等級3」が必要ということです。また一方で、新耐震基準を満たしていても倒壊の恐れがあるということ、建物が旧いほど倒壊率が高かったこともわかりました。
これらのことは、一般社団法人くまもと型住宅生産者連合会の耐震等級3のススメにわかりやすくまとめられているので参考にしてください。

日本で求められるのは「まず命を、次に生活を守る家」

1995年の阪神・淡路大震災。6000人以上という多くの犠牲者の8割は木造住宅などの建物が倒壊したことによるものでした。建物の全壊だけで10万戸以上、全半壊・一部損壊・全半焼などの罹災建物の合計は65万戸ほど。当時は耐震基準を満たしていない古い建物が多かったことがこの被害の大きさにつながりました。

まず命を守るため、「倒壊しない家」であることが最低条件です。阪神淡路大震災では、1981年の新耐震基準を満たしている家では建物の崩壊は少なかったことが報告されています。しかしその後、建築基準法の耐震基準はさらに改正・強化されることになりました。

2016年の熊本地震は、震度7の揺れに2度見舞われるという大きな災害でした。人口が密集する市街地で起きた阪神・淡路大震災と単純に比較することはできませんが、かつての震災と比較すると建物が倒壊して亡くなる方が減ったということはできるかもしれません。その背景には20年の間に進歩してきた耐震基準があります。
つまり、最新の耐震基準に基づく「耐震等級3」は地震後の生活を守るのために有効といえます。
「新耐震基準」や「耐震等級3」については、次の項で基本から詳しく解説します。

変遷しながら今に至る「新耐震基準」。安心の基準は?

日本の建築基準法における耐震基準は震災を経験しながら何度も改定されてきました。そんな耐震基準の変遷についてご紹介します。

耐震基準の歴史

日本では大正時代の関東大震災の体験以降、「地震に強い建築」が検討され、法制度にも反映されてきました。特に、日本特有の木造建築の耐震技術に改良を重ねながら今に至っています。

●1924年 市街地建築物法に「耐震規定」を制定
前年の関東大震災をふまえて法律に耐震規定が書き込まれました。これが世界で最初の耐震規定の制度化といわれています。

●1950年 建築基準法制定
市街地建築物法が廃止され、建築基準法が制定されました。木造建築に斜めの筋交いをすることなどが義務付けられました。

●1959年 建築基準法の改正
木造住宅の壁量規定で「基準壁量」が増加されました。壁量とは床面積に対して必要とされる壁の量のことです。

●1971年 建築基準法施行令改正
木造住宅の基礎はコンクリート造又は鉄筋コンクリート造の布基礎とすることなどが追加されました。

●1981年 建築基準法施行令大改正<新耐震基準>
耐震基準が大きく改正されました。現在も使用されている「新耐震基準」がこのとき決定しました。壁量や筋交いの強度をさらに上げて「震度6~7の揺れでも崩壊しない」ような建物とすることが定められました。これより以前を「旧耐震基準」と呼んで区別するようになりました。

●2000年 建築基準法改正
阪神・淡路大震災を踏まえて建築基準法の耐震基準が改正されました。「地盤調査の義務化」「地震力の計算方法の見直し」などの改正があり、「崩壊しない建物」の基準が強化されました。

耐震等級1・2・3とは

2000年に住宅の品質確保の促進等に関する法律が制定され、「住宅性能表示制度」ができました。そのなかで耐震性能は等級1・2・3で具体的に表示されることとなりました。(日本住宅性能表示基準

その分類は、国土交通省の住宅性能表示制度にわかりやすく記載されています。

【等級3】 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震等による力の1.5倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度
【等級2】 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震等による力の1.25倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度
【等級1】 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震等による力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度=建築基準法がすべての建物に求めている最低基準

引用元:住宅性能表示制度

ご覧のように耐震等級3が最も耐震性能が高いですが、耐震等級1でも最新の建築基準法の耐震基準を満たしています。ただし前述したように、熊本地震のような極めて規模の大きな地震に備える安心を得るためには、耐震等級3が望ましいということになります。

耐震等級3の住宅なら地震保険料などが優遇される

注文住宅を建てるを建てるときや建売住宅を購入するとき、耐震等級3の家であれば当然割高となりますが、今実現できる最大限の住まいの安心を手に入れることができます。その上、いくつかの特典があります。

●地震保険料が割引となる
損害保険の地震保険料は耐震等級に応じて割引となります。ある会社の場合の割引率は以下の通りです。
 耐震等級3…50%
 耐震等級2…30%
 耐震等級1…10%
 
●住宅ローンの金利が優遇される
フラット35Sの借入の場合、耐震等級3であれば金利Aプラン、耐震等級2であれば金利Bプランの対象となります。
(ただし他にも諸条件を満たす必要があります。詳しくはフラット35Sの技術基準の概要参照。)
他のローンでも耐震等級に応じた金利の優遇などを実施している場合があります。

●贈与税の税制特例がある
耐震等級2以上の家では父母や祖父母などからの贈与が非課税となる場合があります。
(非課税には諸条件や期限があります。詳しくは「住宅取得等資金の贈与税の非課税」のあらまし参照。)

●耐震等級2以上で長期優良住宅の認定を受ければ各種の補助金が受けられる
耐震等級2以上で、かつ省エネ性能などの条件も満たすことで長期優良住宅の認定を取得できます。長期優良住宅は次世代住宅ポイント地域型住宅グリーン化事業などの補助金対象となります。(ただしいずれも期間限定で、各種の条件を満たす必要があります。)

耐震等級を含めた住宅性能は第三者機関がチェックする

耐震等級2あるいは3を満たす家を建てたいときはプランニングの段階から実績のある工務店に希望を明確に伝え、依頼します。
耐震等級の評価は住宅性能表示制度の一環として「登録住宅性能評価機関」が行います。注文住宅の新築の場合は、設計段階で1回「設計住宅性能評価書」を発行するので、そのつもりで準備する必要があります。その後工事段階では原則4回の現場検査を行うこととなっています。

災害に強い家とは? 住宅を支える最新技術

耐震性能に優れた家を建てるのは専門家ですが、注文住宅を建てる人も依頼する前に耐震技術に対する大まかな知識を持っておくことをおすすめします。地震やその他の災害に強い家はどんな技術によって支えられているのかをご紹介します。

耐震、制震、免震とは

建物の地震対策には「耐震」「制震」「免震」の3種類があります。

耐震…壁や柱を強化する、筋交いを入れる、補強材を入れるなどの方法で建物を丈夫にします。
制震…建物の力が伝わる要所に制振装置(ダンパー)を設置して、揺れを吸収します。2階以上では揺れの大きさを緩和できるとされています。
免震…地面と建物の間に免震装置(積層ゴム)を入れて、地面の揺れが建物に伝わりにくくします。地震の揺れを大幅に緩和できるとされます。ただし、垂直方向の揺れに弱い、水害に弱いといった弱点も指摘されています。

住宅を支える最新技術の事例

テクノストラクチャー工法
テクノストラクチャー工法は木造住宅を災害に強く木造住宅の要となる梁と接合部を金属のオリジナル部材で強化した耐震工法です。さらに、2階建て以下の木造建築では義務化されていない構造計算を実施し、確実に耐震性・耐久性を実現します。
■川下建設ではテクノストラクチャー工法を採用しています。耐震工法と構造計算で、顧客の希望通り、確実に耐震等級3の評価を得られる家を実現します。

耐力壁
耐力壁は、地震の揺れに対して壁で支えます。古くからある「筋交い」を使った構造は耐力壁のひとつです。ほかに2×4工法における壁面も耐力壁の役割を果たします。
制震ダンパー
木造住宅用の制震構造として、制震ダンパーを用いる方法があります。壁面に設置するものや、柱と梁の接合部分に取り付けるタイプなどがあります。

免震装置
「免震住宅」ではベタ基礎と建物の間に免震装置を設置します。地震の揺れを軽減する効果が高い工法です。

水害に強い住宅
各種の耐震技術が開発されてきましたが、近年増えてきた水害への対策はあまりすすんでいないといえます。しかし、床下浸水を防ぐ構造の家や、基礎を強化した家などで対処することができます。ハザードマップで水害の可能性がある地域に家を建てる場合には慎重なプランニングが必要です。