地震の被害が多い日本。今住んでいる家の耐震性は大丈夫でしょうか?
中古住宅の耐震性強化には「耐震リフォーム」が有効です。今回は、耐震診断や耐震リフォーム、近年注目の「耐震シェルター」についてご紹介していきます。
うちは大丈夫? 気になったらまず「耐震診断」を
新耐震基準が適用された1981年以前に建てられた住宅は、現代の基準で耐震診断することにより耐震改修の必要性がわかります。また、1981年以降に建てられた住宅でも築年数が20年以上の場合や災害に遭って家の傷みが気になる場合などに、耐震診断が有効です。
ここで最初に注意点があります。近年「国土交通省の依頼で無料耐震診断のため訪問しました」などといって訪問する悪質リフォーム業者の事例が報告されています。耐震診断は希望する当事者から専門機関に依頼し、有料で行われます。「無料」や「訪問」はあり得ないのでご注意ください。
耐震診断は第三者に依頼
耐震診断には一般診断とより詳しい精密診断があります。一般診断であっても項目は多岐にわたり、高度な専門性が必要です。一般診断を無料で行う民間リフォーム業者もありますが、利害関係のない公平な立場からの評価を受けることが望ましいので、第三者の専門家に依頼して有料の耐震診断を受けることがおすすめです。
耐震診断の費用は一般診断で10万円~20万円、精密診断で30万円前後が標準ですが、設計図の有無や建物状態によって異なります。
また、無料でパソコン、スマホからできる簡易な耐震診断として、財団法人日本建築防災協会が提供する誰でもできる我が家の耐震診断というサイトがあります。こちらでチェックすることにより、簡単に自分の家について「耐震診断を受けるべきか」を知ることができます。
耐震診断を専門家に頼みたいが、どこに依頼したらいいかわからないという場合は、住んでいる自治体の担当窓口で相談することがおすすめです。各自治体に登録している耐震診断登録事務所や登録技術者の紹介を受けることができます。
耐震診断の補助金~愛媛県では耐震診断が3000円から実施可能!
愛媛県の場合は県内の全市町において木造住宅の耐震診断が3000円から実施可能という嬉しい制度があります。耐震診断技術者派遣制度を利用することが条件となります。その他制度について詳しくは、市役所・町役場の住宅相談窓口へ問い合わせてください。
自治体の補助事業も実施されています。上記の派遣制度を利用しない場合が対象となります。
●西条市 木造住宅耐震診断事業
2万円を限度額とする補助金制度があります。事前に担当窓口へ相談してください。
●新居浜市 木造住宅耐震診断事業
2万円を限度額とする補助金制度があります。必ず担当窓口へ事前相談してください。
●松山市 木造住宅耐震診断事業(補助制度)
4万円を限度額とする補助金制度があります。補助対象かどうかを確認するため、事前に担当窓口へ相談してください。
●今治市 耐震診断補助制度
5万円を限度額とする補助金制度があります。事前に担当窓口へ相談してください。
その他の自治体も実施していることが多いので、直接担当課へ問い合わせてみてください。
これで安心!住宅の耐震リフォームの進め方
住宅リフォームは様々な目的で行われます。間取りの変更、水回り設備の更新、バリアフリー化。耐震性を高めるための「耐震リフォーム」については、多くの自治体で補助金事業の対象となっています。制度をうまく利用しながら耐震リフォームで安心できる住まいを実現することがおすすめです。耐震診断により「耐震リフォームが必要」という結果が得られた場合、その後どのように進めていけばいいかについて解説します。
耐震リフォーム業者の選び方のコツ
耐震リフォームの費用は数十万円~なので、全面リフォームや住宅の新築と比べたら手軽に感じて、リフォーム業者選びもしやすいと思うかもしれません。しかし、大切な家と家族の安全を耐震リフォーム工事に託すのですから、慎重に検討して本当に信頼できるリフォーム会社を選びましょう。耐震リフォーム会社を選ぶポイントについてご紹介します。
(1)新築したときの施工会社に依頼
家を新築したときの施工会社と居住してからも定期メンテナンスなどで良好な関係を保っていて、さらにその会社がリフォームにも実績がある場合、耐震リフォームについても相談してみましょう。工事内容についてもっともよく知っている当事者ですから、リフォーム工事もスムーズに進むはずです。
(2)一括見積サイトを利用するなら「保証付き」が安心
どこに依頼すればいいか迷っている場合は、リフォーム工事の一括見積で探してみる方法もあります。一括見積サイトはたくさんあり中には信頼性に欠けるものもあるので、名前や住所などの個人情報を入力する場合はサイトの運営会社や実績をよく確認しましょう。また、サイト経由で実際にリフォーム工事を依頼した場合の「保証付き」などの但し書きがあるサイトはフォロー体制がしっかりしています。
(3)相見積もりでは「価格」より「納得感」を重視
工事の確実性が最も重要な耐震リフォームですから、極端に安い見積価格を提示してくる会社はあまり信頼できません。そして、高すぎる価格を提示する会社も「高いお金を払えば大丈夫だろう」と安心できるものとは限りません。大切なのは、見積もり金額と工事内容がわかりやすく納得できるものかどうかです。見積書や提案に不明な点があれば理解できるまで質問して、内容を自分で理解したうえで選びましょう。
(4)急がずじっくりと検討する
「今日までに決めれば割引価格」などの売り文句には乗らないこと。耐震リフォーム工事は水回りや内装工事など他のリフォームと合わせて行うことも多いでしょう。そんなとき「ここまでまとめれば××万円になります」のような提案も多く受けますが、必要な工事・不必要な工事をよく検討して決めましょう。
耐震リフォームの予算は150万円程度が相場
耐震リフォーム工事のみの予算は、耐震金具取付、壁補修などの補強工事のみであれば50万円程度、外壁や屋根の工事を追加していくと100万円、150万円…と費用が上がります。築年数30年以上の家を耐震リフォームする場合には200万円以上かかることも多いです。
通常の耐震リフォームの場合、100~150万円の工事となることが一般的です。もちろん実際には、個別の建物の状態や家の広さによって価格が変動します。
愛媛県発行の耐震改修工事の資料にも耐震改修工事費のデータが掲載されています。最も多いのが90万円以上150万円未満で156件、次に150万円以上200万円未満が80件となっていて、この2つの価格帯で全体の6割を占めています。
耐震リフォームの補助金
愛媛県では南海トラフ地震対策の一環として耐震改修設計、耐震改修工事などに補助金を交付しています。標準的な耐震改修工事のケースで受け取れる補助金額の合計は116万円以上。くわしくは県発行のパンフレットを参照してください。
上記の金額に各市町でさらに補助金を上乗せしている場合もあります。
●松山市 木造住宅耐震改修等補助事業
耐震改修等補助事業では耐震改修工事費の補助限度額が100万円、改修設計・工事管理費の補助限度額が14万円となっています。(ただし2020年度より減額予定)
※西条市、新居浜市、今治市では耐震改修工事費補助額への自治体による上乗せはありません。(2019年度)
低コストで安心が得られる「耐震シェルター」とは
築年数の古い家で全体を耐震リフォームすると高額になってしまう場合や、高齢者の一人暮らしで大掛かりな耐震リフォームは負担が大きいという場合の選択肢となっているのが、低予算で安全を確保できる「耐震シェルター」です。
耐震シェルターとは、命を守れるスペースを作ること
シェルターとは「避難所」の意味。家全体を耐震リフォームすることが難しいとき、家の中の一部屋または一部分に地震がきても倒壊しないスペースを造るのが「耐震シェルター」です。
高齢者が古くからの住まいに一人で住んでいて、家の耐震性に問題がある場合、通常は耐震改修がおすすめです。しかし昔の家全体を耐震リフォームする費用は高齢者にとって大きな負担となるので耐震改修は難しい。こうしたケースが日本全国ではかなりの割合に上ります。
このような状況の解決策として登場したのが、小さな居住スペースだけを耐震化して命を守るのが「耐震シェルター」です。耐震シェルターの費用は簡易なものでは30万円~、家のなかに耐震性のある部屋を設置するタイプで30万円~100万円程度です。耐震シェルターに補助金を交付する自治体も増えています。
耐震シェルターの種類
耐震シェルターには大小さまざまなタイプがあります。
●小部屋タイプ
普段寝室として利用している部屋などに、主に木材を使って頑丈な小部屋を造ります。簡易なもので30万円より、大型のものなら200万円程度まで種類が豊富です。工期は1~2日ほどという製品が多いです。
●コンテナタイプ
輸送コンテナの素材で作ったシェルターです。8畳程度のやや広い空間を造ることができます。1~2日で設置でき、価格は80~100万円程度。
●ベッドタイプ
丈夫な天蓋つきのベッドのような形状で、寝るためのスペースの安全を確保します。「防災ベッド」などとも呼ばれます。要介護の方などに向いています。1日で簡単に設置でき、価格は20万円~。
●シェルターユニットバス
普段の居室ではなくユニットバスを耐震シェルター化します。緊急時には浴室に逃げ込む必要があります。家族の人数が多いときに向いています。価格は42万円~
●ブロック組み立てタイプ
レゴブロックのような木製ブロックを組み立てて耐震シェルター空間を造ります。寝室のほか子ども部屋、大きな部屋の間仕切りなど自由度の高い使い方ができます。一部屋程度の大きさ分で価格は40万円程度。
跡で紹介するように耐震シェルターにも自治体の補助金が交付されることがあります。その場合、自治体が安全性を確認してセレクトした耐震シェルターのリストから選ぶといいでしょう。
耐震シェルターのメリットとデメリット
耐震シェルターのメリットは以下の通りです。
・価格が安い
・工期が短く住む人に負担がかからない
・再利用できる製品も多い
耐震シェルターのデメリットは以下の通りです。
・家の一部分のみしか安全が確保できない
・デザイン的に元の部屋と合わないことがある
・家族の人数が多いと対応しづらい
耐震シェルターへの補助金制度
愛媛県では、耐震シェルターの設置工事に対して40万円の定額補助を実施しています。こちらのページに記載がありますが詳細については市町の窓口へ問い合わせてください。