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リフォーム?建て替え?それともリノベーション? 費用比較と判断の決め手


「古い実家を二世帯住宅にして住むことになった」「親戚から土地付き中古住宅を安く譲り受けた」
などの場合に悩むのは、リフォームか建て替えか、どちらがいいのかということです。

この記事ではリノベーションを含むリフォームと古い住宅の建て替え、各方法の費用とメリット・デメリットをご紹介します。どちらを選ぶべきか迷ったときに参考にしてください。

この家は今どんな状態? まず必要なのは「住宅診断」

木造住宅の寿命は約30年といわれています。しかし実際には、個々の家の寿命は構造材の耐久性や設計、さらにその後のメンテナンスの状態で大きく変わってきます。築30年未満でも取り壊したほうがいい物件、築50年経っていながらまだ居住可能な物件などさまざまです。

最初から迷わず建て替えると決めている場合は問題ありませんが、リフォームか建て替えかを迷ったとき、まず必要なのは、家の現状を正確に知る「住宅診断」です。
リフォームの方針を決めている場合には、耐震リフォームを含むフルリフォームがいいのか一部だけのリフォームでも問題ないか、その程度を見極めるために住宅診断が必要となります。

住宅診断(ホーム・インスペクション)は中立的な第三者に依頼

住宅診断は、信頼できる専門家でかつ利害関係のない第三者に依頼することが望ましいです。
リフォーム会社などで無料診断を実施しているところもありますが、リフォーム会社はリフォームの受注をするための営業の一環として無料診断を行うので、リフォームの必要性を強調する結果になりかねません。
そしてさらに気をつけたいのは、悪質なリフォーム業者も中にはいるということです。無料の住宅診断を受けることを勧めてきて、診断後は深刻な結果を提示してリフォームをの契約を迫るなどの事例が報告されています。

一方、公平な立場から住宅診断を行う専門家は有料です。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会の公式サイトでは都道府県別に認定を受けた「住宅診断士」を検索できます。費用は5~6万円程度が一般的で、機材を使用する診断の場合は10万円以上となることもあるようです。住宅診断の情報は、「リフォームか建て替えか」「どんなリフォームをすべきか」などを判断する上で、根拠となる重要な情報です。多少の費用がかかっても公平・公正な視点から診断を受けることができる専門家への依頼をおすすめします。

住宅診断と耐震診断の違い

住宅診断と耐震診断は同じように家の構造を点検しますが、診断する内容は別物です。住宅診断をすれば耐震診断はそのなかに含まれるというわけでも、その逆でもないので注意しましょう。
住宅診断は住宅診断士が行い、建物の劣化状態やリフォームがどの程度まで必要かを点検します。
一方の耐震診断は、建築士が行い、現在の耐震基準と照らし合わせて建物の耐震性能を診断します。

中古住宅の現状を正しく知るには、住宅診断と耐震診断の両方が必要です。これからリフォームを検討しようという場合には両方の診断を受けましょう。住宅診断と耐震診断、両方を同時に行うことができる専門家や会社もあり、一括で依頼すれば費用が節約できることもあります。

耐震診断については、耐震構造についての記事を参照してください。

全面リフォームと建て替え、どちらが得なのか

従来のリフォームというと内装の変更や水回りの改修など、主に目に見える部分に手を加える工事というイメージですが、近年のリフォームは技術が格段に進歩してきました。
間取りや水回り位置の変更はもちろん、腐食した柱の修復や耐震リフォームなど家の構造部分にかかわる工事、省エネ対応の「エコリフォーム」などもかなりの程度まで可能です。築年数が30年以上経過している家でも、状態がよければ全面リフォームすることができるようになってきました。

リフォーム技術が進歩した今だからこそ、「全面リフォームか、建て替えか」の見極めはさらに難しくなったともいえます。しかし、選択肢が豊富になっていることは間違いないので、自分や家族のスタイルに合ったベストな方法を十分に検討して選んでいきましょう。

豊富になったリフォームの選択肢とは

ここでリフォームの種類・用語について確認しておきましょう。

■部分リフォーム
窓枠だけ、ドア一枚だけといった家の一部を回収する規模な工事も部分リフォームです。部分リフォームには以下のような種類があります。
・バス・キッチンなど水回りと給湯設備を交換するリフォーム
・外壁塗装や防水工事リフォーム
・部屋ごとの内装リフォーム
・太陽光発電を導入するリフォーム
・その他家の一部を回収するリフォーム

■全面リフォーム
内外装、増改築、耐震リフォームなどを含む大規模な工事は全面リフォームまたはフルリフォームと呼びます。全面リフォームすることで新築の住宅に近い使い勝手の良さ・住みごこちの快適さを手に入れることができます。柱や扉、外観など、古い家の気に入っている部分をあえて残すことも可能です。

■リノベーション
リノベーションという言葉は日本で使用されるときは建物を大幅に改修することを指しますが、明確な定義があるわけではありません。しかし多くの場合リフォームとの比較でいうと「建物の再生、新たな付加価値の追加」といった意味合いが含まれます。リフォームが工事そのものを指すのに対して、建物のコンセプトや機能を「変えること」を強調したいときによく使われる言葉です。

■スケルトンリフォーム
建物の内装まですべて撤去して構造躯体(スケルトン)だけを残し、構造の耐震補強や間取りの変更を含む大掛かりなリフォームをすることをいいます。全面リフォームやフルリフォームとほぼ同じ工事内容となることもあるしリノベーションの具体的な手段がスケルトンリフォームというケースもありますが、基本の意味は「骨組からリフォームする」ということです。

全面リフォームと建て替えの比較表

中古住宅を全面リフォームするか、あるいはリフォームするかを検討するにあたり、それぞれのメリットとデメリットを知っておきましょう。以下がその比較表です。

建て替え 全面リフォーム
費用 △費用がかかる
約2000万円~
〇費用が少なくてすむ
約1000万円~
追加費用 △解体費・仮住まい費用・税金(不動産取得税・登録免許税)等 〇本体工事代金のみ
工事規模によっては解体費・仮住まい費用がかかることもある
工期 △長い 約4か月~半年 〇短い 約1~2か月
法規制 ×物件によっては建て替え不可や建て替え制限あり 〇建て替え不可物件でも工事ができる
補助金の利用 〇各種の補助金制度が充実 〇リフォームへの補助金もかなりある
間取り 〇自由に設計できる △一部変更できるが制約がある
耐震性能 〇最新の耐震性能で建てられる 〇耐震リフォームが可能
リスク 〇特になし △建物状態によっては想定以上に費用がかかることもある
工事中の暮らし △仮住まいが必要
費用や引越しの負担が大きい
〇住んだまま、あるいは短期の仮住まい

建て替えの最大のメリットは、自由なプランで最新性能の家を持てること

表を見てわかるように、建て替えの一番のメリットは、現在の自分が理想とする住まいを自由に設計して実現できることと、そして現代の最新性能を備えた寿命の長い家を持てることです。また、地盤改良や基礎工事なども最適な方法で実施できます。

一方、建て替えのデメリットはリフォームに比べて費用がかかることと工期が長いことです。建て替える場合は注文住宅となりますから2000万円程度は建築費用として用意する必要があります。注文住宅の工期は4~6か月程度となります。「工期が長い」ということは仮住まいでの生活が長くなるということなので、その間の家賃などの諸費用もかなりの負担となります。
以下は、建て替えで2000万円の注文住宅を新築するときの諸費用の計算例です。

中古住宅を建て替えるときの費用の例
本体工事価格 2000万円
元の家の解体費用 100万円 実際の解体費用は家の大きさや建物状態によって変わる
仮住まい費用 74万円 家族4人で家賃8万円のマンションを半年借りた場合
8万円×6か月=48万円、敷金礼金など諸経費26万円の合計
引越し費用 20万円 10万円×2回
不動産取得税 60万円 2000万円で新築住宅を建てた場合、×3%で60万円(※軽減税率適用例)
合計 2254万円

 

注文住宅を建てる際にはプランを固めるまでに打ち合わせを重ねるので着工前の準備期間も2か月~半年程度必要です。建て替えの際には資金と時間に余裕を持って計画的に進める必要があります。

全面リフォームのメリットは低コストで工期も短いこと

建て替えと比較したときの全面リフォームのメリットは、まず工事費用が新築より少なくてすむことです。全面リフォームの費用は1000~1500万円程度が一般的です。
リフォームなら工期も短くなります。大掛かりなリフォームを行う場合でも2~3か月程度と、建て替えの半分の期間で済みます。
また、住んだまま工事できるというのも大きなメリットです。全面リフォームであってもエリアを分けて工事することで居住を続けられる場合があります。

一方リフォームのデメリットは、既存の古い家の間取りを大きく変更することができないこと、建物状態に問題があり事前に見積もった予算よりも割高になる場合があることなどです。

建て替えることができない「再建築不可」物件とは

中古住宅のなかには建て替えができない建物もあり、注意が必要です。古い土地付き建物のなかには現代の建築基準法が施行される以前から建っているものがあり、その一部の敷地は新制度のもとでは、更地にして新たに建物を建てることができません。
代表的な例として「道路への接道部分が2メートル未満の土地」があります。つまり路地の奥に建っている家などの場合、再建築不可物件である可能性があります。
また、建て替えると建築面積に制限がかかる土地もあります。その代表例は建物敷地に接する道路の幅が4m未満の場合で、こうした道路を「2項道路」と呼びます。2項道路に面する中古住宅は、建て替えるときに道路幅が4m以上になるように自分の敷地の接道面にスペースを空けて家を建てなければなりません。建物を後退させて建てることを「セットバック」といいます。

再建築不可物件の場合は建て替えができませんが、リフォームして住みやすくすることは可能です。再建築不可物件はリフォームするときにも一定の規制がかかりますが、専門家に相談すれば最善の方法で家をリニューアルすることができます。また、セットバックが必要な物件では建て替えるときに制限がかかるため、現状の住まいの広さを維持したい場合はリフォームで対応すべきということになります。

【ケース別】「建て替え」「全面リフォーム」、こんなときにおすすめ

こんな場合は建て替えがおすすめ

中古住宅をどうするか。以下のような場合にはリフォームよりも建て替えがおすすめです。

中古住宅が築30年以上
冒頭で述べたように、日本の木造住宅の寿命は築30年とされています。したがって「築30年」は家を建て替える時期を見極めるひとつの目安といえるでしょう。

今後30年以上住み続ける予定
小さな子どもがいる家族など、転居することなく長く住み続けていく予定であれば、建て替えがおすすめです。
築30年以上の家をリフォームしたとき、家の寿命は伸びますが、さらに30年長持ちさせることは難しいでしょう。しかし建て替えを選択すればその後は長持ちする家を持つことができます。

30年以上前と比較して現在の住宅の建築技術は上がり、性能も格段に上がっています。予算さえ許せば最新性能の家を新築することがおすすめです。そして最近の注文住宅は「長期優良住宅」として建てられ、60年~100年住むことが可能とされています。今回は建て替えを選択し、その後はメンテナンスやリフォームをしながら長く住むようなライフプランを立てることができます。

全面リフォームの費用が新築費用の70%以上となる場合
全面リフォームの見積もりをとったときにその金額が新築費用と比較して約70%以上位になる場合は、費用の安さというリフォームのメリットをあまり享受できないため、建て替えを選択するべきでしょう。

希望する間取り変更がリフォームでは実現できない
子ども部屋を作りたい、増築したいなどの新しい家に望むプランがリフォームでは実現することが難しい場合もあります。こうしたときは建て替えにより希望通りの家を実現させましょう。

地盤などに不安がある
たとえば最新のハザードマップを確認して、地盤に不安があることが判明したら、軟弱地盤の改良が必要となります。このような場合は一度建物を解体し、地盤改良工事を行ってから新規で家を建てれば安心です。

こんな場合は全面リフォームがおすすめ

予算が少ないとき以外にも、建て替えよりリフォームのほうがおすすめというケースがあります。

予算に限りがある
限られた資金で家を住みやすくしたいという場合にはリフォームがおすすめです。全面リフォームでも建て替えよりはかなり費用が抑えられます。さらに資金が少ない場合は予算の範囲内で可能な部分リフォームのみ、行うことができます。

2000年以降の最新の耐震基準で建てられている
新耐震基準は1981年以降に実施され、2000年以降でさらに厳格化されました。2000年以降に建てられた家は最新の耐震基準を満たしているので耐震性能を確保できています。内外装や水回りの不満を解消しつつまだ使用可能な家を活用していく全面リフォームがおすすめです。

古い建物に愛着があり、残したい
築年数が30年以上の日本家屋をリフォームすることにより魅力的な空間に生まれ変わらせることも可能です。太い床柱や梁などを残し、新しい建物には出せない風情を演出することができます。「古い家の玄関ホール」など一部を残してリフォームする方法もあります。

仮住まい期間や引越しに負担を感じる
施主が高齢だったり健康上の問題があり仮住まいや引越しに負担感がある場合は、生活上の負担が少ないリフォームがおすすめです。住み慣れた家に居住を続けながら家全体を段階的にリフォームしていくことができます。